■朝日新聞1999年11月20日付朝刊より引用しました■

 「保護管理法」を大幅に強化――自民が改正案
 ペット店に届け出制、動物虐待に懲役刑も 

 輸入された野生動物を飼ったものの世話をしきれず捨てたり、悪質な
ペット店が動物を劣悪な環境に置いたりする事態を防ぐため、自民党は
「動物保護管理法」(動管法)の改正案をまとめた。ペット店などの動
物取扱業者に初めて届け出制を導入するほか、動物を捨てたり、虐待し
たりした場合の罰則を大幅に強化する内容。自由、公明両党の理解を得
て、開会中の臨時国会に提出する方針だ。同法の抜本的な改正は26年
ぶり。動物保護団体は、一歩前進と評価しつつも「欧米並みに、動物実
験施設も含めて、業者の許可制が必要」としている。 

 改正案は、動物の取扱業者に都道府県知事への届け出を初めて義務づ
けるほか、必要があれば、都道府県が立ち入り調査できるようにする。
不適切な飼育、管理をしている業者に改善の勧告、命令を出せる規定も
新たに設けられる。

 また、動物を殺したり、傷つけたりした者は1年以下の懲役か100
万円以下の罰金とするほか、衰弱させるなどの虐待をした者や遺棄した
者には30万円以下の罰金を科す。これまでは、虐待か遺棄した場合に
限り、3万円以下の罰金を科すだけだった。ただし、条文には罰せられ
る行為の前に「みだりに」との表現が盛り込まれており、処罰の対象は
故意で悪質なケースなどに限られる見通しだ。食べる目的で家畜を殺し
ても罰せられない。

 ここ数年、成長して、飼い主になれなくなるなどして、自宅で飼えな
くなったイグアナやワニ、アライグマなどが捨てられて騒ぎを起こす例
が各地で相次いでいる。病気のペットを売りつけるなどの悪質な業者も
絶えない。大阪市北区のペット店が今年6月、ワシントン条約で商取引
が禁止されているオランウータンを密売しようとしていたとして「種の
保存法」違反などの疑いで摘発された。少年らによるイヌやネコの殺傷
事件も続発しており、自民党が検討を重ねてきた。 

 同法については、動物保護団体が約40万人の署名を集め(1)動物
取扱業者への許可制の導入(2)遺棄、虐待の罰則の強化(3)動物実
験の規制――などの抜本改正を自民党などに求めている。 

 改正案について、署名運動に取り組んできた「地球生物会議」(東京)
の野上ふさ子代表は「欧米では、動物実験の関連施設も許可制の対象に
している。また、改善勧告に従わない業者などには営業停止処分を出せ
るようにしないと、悪質な業者はなくならない」と話している。 

◆改正案の骨子 

動物取扱業者は、動物の種類、数、管理方法などを都道府県知事に届け
出る 

都道府県は業者への立ち入り調査のほか、動物の飼育、管理方法を改善
するよう勧告、命令できる。命令に違反すると30万円以下の罰金 

家畜、犬、猫などのほ乳類や鳥類、は虫類などを殺すか、傷つけた者は
1年以下の懲役か100万円以下の罰金

これらの動物に給じや給水をやめることで衰弱させるなどの虐待を行っ
た者は30万円以下の罰金 

これらの動物を遺棄した者は30万円以下の罰金 

■現行の「動物の保護及び管理に関する法律」■

動物の保護及び管理に関する法律
(昭和48年10月1日法律第105号)

(目的)
第1条

  この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の
  保護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、
  生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管
  理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対す
  る侵害を防止することを目的とする。

(基本原則)
第2条

  何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないよ
  うにするのみでなく、その習性を考慮して適正に取り扱うようにし
  なければならない。

(動物愛護週間)
第3条

1 ひろく国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を
  深めるようにするため、動物愛護週間を設ける。
2 動物愛護週間は、9月20日から同月26日までとする。
3 国及び地方公共団体は、動物愛護週間には、その趣旨にふさわしい
  行事が実施されるように努めなければならない。

(適正な飼養及び保管)
第4条

  動物の所有者又は占有者は、その動物を適正に飼養し、又は保管す
  ることにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるととも
  に、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑
  を及ぼすことのないように努めなければならない。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保
  管に関しよるべき基準を定めることができる。

第5条

  地方公共団体は、動物の健康及び安全を保持するため、条例で定め
  るところにより、動物の飼養及び保管についての指導及び助言に関
  し必要な措置を講ずることができる。

第6条

  地方公共団体は、動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害
  を防止するため、条例で定めるところにより、動物の所有者又は占
  有者が動物の飼養又は保管に関し遵守すべき事項を定め、人の生命、
  身体又は財産に害を加えるおそれがある動物の飼養を制限する等動
  物の飼養及び保管に関し必要な措置を講ずることができる。

(犬及びねこの引取り)
第7条

  都道府県又は政令に定める市(以下「都道府県等」という。)は、
  犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引
  き取らなけらばならない。この場所において、都道府県知事又は当
  該政令で定める市の長(以下「都道府県知事等」という。)は、そ
  の犬又はねこを引き取るべき場所を指定することができる。
2 前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取
  りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
3 都道府県知事は、市町村長(第1項の政令で定める市の長を除き、
  特別区の区長を含む。)に対し、第1項(前項において準用する場
  合を含む。以下第6項及び第7項において同じ。)の規定による犬
  又はねこの引取りに関し、必要な協力を求めることができる。
4 都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする公益法人その他の者に
  犬及びねこの引取りを委託することができる。
5 都道府県等は、第1項の引取りに関し、条例で定めるところにより、
  手数料を徴収することができる。
6 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、第1項の規定によ
  り引取りを求められた場合の措置に関し、必要な事項を定めること
  ができる。
7 国は、都道府県等に対し、予算の範囲内において、政令で定めると
  ころにより、第1項の引取りに関し、費用の一部を補助することが
  できる

(負傷動物等の発見者の通報措置)
第8条

  道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若
  しくは負傷した犬、ねこ等の動物又は犬、ねこ等の動物の死体を発
  見した者は、すみやかに、その所有者が判明しているときは所有者
  に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するよう
  に努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があったときは、その動物又
  はその動物の死体を収容しなければならない。
3 前条第6項の規定は、前項の規定により動物を収容する場合に準用
  する。

(犬及びねこの繁殖制限)
第9条

  犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適
  正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあ
  ると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする
  手術その他の措置をするように努めなければならない。

(動物を殺す場合の方法)
第10条

  動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛
  を与えない方法によってしなければならない。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し
  必要な事項を定めることができる。

(動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後措置)
第11条

  動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上
  の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる
  限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。
2 動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態
  に陥っている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、
  できる限り苦痛を与えない方法によってその動物を処分しなければ
  ならない。
3 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、第1項の方法及び
  前項の措置に関しよるべき基準を定めることができる。

(動物保護審議会)
第12条

  総理府に、附属機関として、動物保護審議会(以下「審議会」とい
  う。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、動物の保護及び管理に関す
  る重要事項を調査審議する。
3 内閣総理大臣は、第4条第2項若しくは前条第3項の基準の設定又
  は第7条第6項(第8条第3項において準用する場合を含む。)若
  しくは第10条第2項の定めをしようとするときは、審議会に諮問し
  なければならない。これらの基準又は定めを変更し、又は廃止しよ
  うとするときも、同様とする。
4 審議会は、動物の保護及び管理に関する重要事項について内閣総理
  大臣に意見を述べることができる。
5 審議会は、委員15人以内で組織する。
6 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
  ただし、その過半数は動物に関する専門の学識経験を有する者のう
  ちから任命しなければならない。
7 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者
  の残任期間とする。
8 委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事
  項は、政令で定める。

(罰則)
第13条

  保護動物を虐待し、又は遺棄した者は、3万円以下の罰金又は科料
  に処する。
2 前項において「保護動物」とは、次の各号に揚げる動物をいう。
    一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、
      いえばと及びあひる
    二 前号に揚げるものを除くほか、人が占有している動物で哺
      乳類又は鳥類に属するもの

附則
(施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して6月を経過した日から施行する。

(軽犯罪法の一部改正)

2 軽犯罪法(昭和23年法律第39号)の一部を次のように改正する。
  第1条第21号を次のように改める。
   21 削除

(総理府設置法の一部改正)

3 総理府設置法(昭和24年法律第127号)の一部を次のように改
  正する。
    第6条中第16号の3の次に次の1号を加える。
    16の4 動物の保護及び管理に関する法律(昭和48年法律
    第105号)の施行に関すること。
    第15条第1項の表中中央交通安全対策会議の項の次に次のよ
    うに加える。
    動物保護審議会動物の保護及び管理に関する法律の規定により
    その権限に属せしめられた事項を行なうこと。

(狂犬病予防法の一部改正)

4 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)の一部を次のように改正
  する。
    第5条の2を削る。

(罰則に関する経過措置)

5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお
  従前の例による。